ホテルにチェックインしたらもうすぐ17時。 残り時間は少ないが、明日は10時過ぎには出発してしまうので、今日中に回れるところは見ておこうと思って早速外へ出た。
蒸し暑く散策にはちと苦しいが、雨が降っていないのが幸いである。
ホリディインを出て、ホテルリスボア前を通ってマカオのメインストリート、新馬路を歩く。 このあたりは高層ビルも多く、小香港という感じで特に感慨はないが、歩道がカルサーダス(石畳)なのがマカオらしい。
少し歩くと、時計台が印象的な重厚な中央郵便局が見えてくると、マカオ観光の出発地、セナド広場へ着く。
突然南欧風の建物が集まる広場が目に入るが、不思議とまったく違和感を感じなかった。東洋と西洋が絶妙に交じり合うマカオの魅力を感じた瞬間であった。
セナド広場は平日にも関わらず多くの人で賑わっていた。その賑わいはまさに中国であるが、周りの建物はポルトガル様式…何とも言えない不思議な感覚だ。
セナド広場に敷き詰められた波打った模様のカルサーダスは、その規則正しい模様が実に見事。ポルトガルの香りを満喫する。
セナド広場に面する民政総署は、マカオの中でも特にポルトガルの雰囲気を感じさせる建物である。
内部は白と青のアズレージョで装飾され、温かい照明に照らされた雰囲気がとても情緒溢れる感じ。 中二階の中庭も落ち着いた雰囲気に包まれていた。
セナド広場に面する純白が眩しい建物は、かつての福祉施設である仁慈堂。 建物横の小路は古い建物に囲まれ、ヨーロッパの路地に紛れ込んだよう。 マカオは路地裏歩きが楽しく、いくら散策しても足らないくらいだ。
買い物客で大賑わいの広場を先に進むと、淡い黄色が鮮やかな聖ドミニコ教会に着く。
黄色いファサードがとても印象的で美しい教会の中に入ると、外の喧騒から一転、驚くほど静かであった。 聖母と獅子が祀られた豪華な祭壇も素晴らしいが、その外のオレンジ色の照明に照らされた廊下も落ち着いた荘厳な雰囲気にあふれていた。
この先も人で大賑わい。普通であればこの道を先に進むとマカオのシンボル、聖ポール天主堂跡に着くが、先に閉館時間の迫っている教会群を巡ることにして、セナド広場を南へ向かう。
丘の多いマカオ半島は坂道が多い。急な坂は足には厳しいが、趣があって散策は楽しい。 地元の生活の香りを感じつつ、急坂を上りきると視界が開け、ガジュマルの樹が印象的な聖オーガスティン広場に着く。
美しい石畳に囲まれた小さな広場は、観光客の数も少なかった。 噴水の水の音と、大きな木々の緑が心地よい。 ヨーロッパの小さな街に来たかのような錯覚を覚えるが、家路を急ぐ人やクルマが走るここはマカオ。それがまったく違和感を感じないのは、マカオの長い歴史の成せる業なのだろう。
広場の由来である聖オーガスティン教会。こちらも淡い黄色が穏やかな気持ちにさせてくれる教会であった。
このあたりは世界遺産に登録された由緒ある建物が集中しているのだが、残念なことに聖ジョセフのセミナリオ、聖ジョセフ教会、ドン・ペドロ5世劇場ともに改修中で見ることが出来なかった。 ま、教会が改装中なのはヨーロッパでも年中行事なので致し方ないが、こう集中的に実施するのはやはり世界遺産、マカオ観光ブームが大きいのだと思う。それ自体は世界遺産登録前から注目していた自分としては嬉しい限りだが、改装で綺麗になった代わりに昔からのマカオの雰囲気から離れた物にだけはなってほしくないなと思う。
この先の聖ローレンス教会は時間切れで入れなかったので引き返すこととし、最後に聖オーガスティン広場に面するロバート・ホー・トン図書館に入ってみる。
香港の大富豪ホー・トンの別荘として建てられ、今は図書館として使われている。 大きな窓が印象的な建物も素晴らしいが、青々とした木々に覆われた前庭と裏庭がとても良かった。湿度が高いにも関わらずここで熱心に勉強している人もいて、落ち着いたゆったりとした空気を楽しむ。
図書館は増築され、設備が整ったものになっていた。 1階には児童図書室もあって、近くの図書館にいるかのような気分になる。なかなか面白い本とかも沢山あるようで今度娘と一緒に来たら楽しいかも、と思った。
セナド広場へ戻り、坂道を登ると広場に出る。広場に面した大堂(カテドラル)は、石造りの重厚な外観と、ステンドグラスの繊細な色使いが対照的で印象深い建物である。
夕暮れが近づき、ステンドグラスがライトアップされた。そのほのかな明かりがまた幻想的で素晴らしかった。
大堂を後にし、商店が集まる小道を進むと灰色の建物、盧家屋敷が見えてくる。
外観は中国様式だが、中に入ると幾何学模様の独特の装飾や、西洋を意識した色ガラスが並ぶ。東洋と西洋のスタイルが見事に組み合わさった様式は見事であった。
さて、大三巴街のみやげ物屋を冷やかしつつ、進もう。
いよいよマカオのシンボル、聖ポール天主堂である。
これまで世界遺産に指定された教会群を見てしまうと、正直、ファサードだけしかない聖ポール天主堂跡はその知名度ほどでもないのかなと思っていた。
確かに立体感はないが、ファサードの前に立ち、繊細な彫刻を眺めると、イエスズ会の人々の熱意に圧倒される。 やはり、ここはマカオのシンボルだ。
天主堂跡からはここまで辿ってきた街並みを一望することができ気分が良い。 異様な格好のグランドリスボアも、今のマカオらしくて溶け込んで見えてしまう。変化を吸収し繁栄していく、それがマカオの魅力なのだと改めて感じた。
いよいよ夕暮れとなってきた。 オレンジ色の街灯が優しく街を包む。 昼のマカオも良いが、夜のマカオもまた素晴らしいという。 マカオに宿泊したことだし、更に夜景も堪能することにしよう。
しかしたった2時間くらいで膨大な写真の量…マカオ恐るべし。