室町時代に建立された歴史ある塔頭で、2015年にNHK BSプレミアムで放送された「京都人の密かな愉しみ」におけるミニドラマ「わたしの大黒さん」の舞台としても知られる。 今回ぜひ訪れたいなと思っていたところである。 雲龍院は泉涌寺本坊の更に奥にあり、東福寺駅から徒歩20分、泉涌寺道バス停からでも徒歩15分はかかる。 そんな奥地にあるので、東山の人混みとは無縁で、日曜の昼前だというのに訪れる人も少なく、落ち着いた京都の佇まいを楽しむことができる。
拝観入口へ。ドラマで見たそのままの眺めが楽しい。
正面の龍の襖絵を眺めつつ中へ。
蓮華の間
雲龍院はこじんまりとした寺院ながら、見どころが沢山ある。 まずはこの蓮華の間へ。
雪見障子が風情があるが、下手よりから眺めると、椿・灯篭・楓・松と4枚の異なる絵を眺めることができるのだ。 ちょうど楓がオレンジ色に映えていたので色々のコントラストが更に際立って綺麗な眺めだった。 しばしこの景色を腰を据えて楽しむ。
大輪の間
続いて庭園を望む大輪の間へ。
庭園の楓はピークは過ぎたもののオレンジ色の紅葉が美しくて思わず声を上げてしまう。 何より、こんなに素晴らしい景色なのに大輪の間には誰もいなかった。この景色を独り占めするなんて贅沢すぎます。
大輪の間の一角には瞑想石なる石が置かれていた。 せっかくなので椅子に腰を下ろし、息をととのえてこの庭園美を楽しむ。マインドフルネスですな。
龍華殿・霊明殿
本堂の龍華殿へ。 雲龍院も本坊の泉涌寺同様、天皇家に縁のある寺院であり、正面の勅使門は皇族が来たときのみ使われるという。 中は撮影できなかったが、本尊の薬師如来、そして毘沙門天もこの日まで特別公開していた。 あちこちに手作りの解説文が飾られ、そのフレンドリーさも雲龍院の魅力である。
菊の紋に囲まれた灯篭は、徳川慶喜が寄進したものだとのこと。 その奥の霊明殿に祀られている後円融天皇坐像は、首だけが抜けるようになってるそうだ。 あいにく写経を行っていて扉が閉ざされており、窓越しからその姿を拝む。
水琴窟・悟りの間
建物の反対側へ。
庭に飾られた菊の紋を象った水琴窟。竹筒から落ちる水の音がとても綺麗に聞こえて心が安らぐ。
悟りの間にある丸い窓が悟りの窓。
本当はこちらを先に見るらしいが、四角い窓が迷いの窓である。 今は悟りの窓の向こうは葉が落ちた木々しか見えないが、春は梅の花などが楽しめるらしい。 この前の椅子に腰を落ち着けしばし眺めると、悟りの境地に落ちた気がなんとなくする。 悟りの窓は、鷹峯にある源光庵の方が有名で、正直雲龍院にもあるというのをつい最近まで知らなかった。 源光庵は2022年春まで拝観を休止しているので、その点でも貴重な存在である。
ここから眺める庭園もホント素晴らしかったなぁ…。
走り大黒天
さて、一番の見どころともいえる、京都人の密かな愉しみでお馴染みの走り大黒天であります。
走り大黒天は台所に置かれている。 今の時期は作業場になっていてドラマの景色とはちょっと違ったけど、生活感のある場所に飾られているというのは非常に珍しい。 ちょっとファンキー?な顔であるが、一歩を踏み出そうとしている姿がまさに我々に勇気を与えてくれる。
写真が撮れない代わりに、走り大黒天の絵葉書を100円で売ってくれるので、せっかくなので買ってスキャンしてみました。 そんなわけで、見どころいっぱいの雲龍院の見学はおしまいです。
雲龍院のまとめ
いやはや、予想をはるかに上回る素晴らしい場所でした。 見どころは沢山あるし、皇室縁の寺院にもかかわらずお高くとまることなく案内もしっかりしていてホスピタリティ溢れているし、何より人が少なくて境内を包む雰囲気が本当に心落ち着く。地元の人がおすすめする場所というのもよくわかる。 他の寺院は30分もあれば見てしまうのだが、ここは思わず1時間近くいてしまった。 残念だったのはコロナ禍中での特別拝観ということでお抹茶の提供が休止されていたこと。 普段であれば好きな場所で菊の紋を象った茶碗で提供される抹茶と和菓子を頂くことができるのだが、それはまた次回の楽しみにしたいと思います。 ただ、ここは正直これ以上人気出てほしくない場所ですな。この落ち着いた雰囲気はいつまでもこのままでいてほしいと思います。
訪れた様子を動画にまとめました。水琴窟の音も入ってますのでご興味のある方はどうぞ。